
例えば道はただずっとそこにあるだけで、その道を行き過ぎる僕たちのことなんて何も知らない。
だから道は茫漠として単にどこかとつながっている。
東京は郊外の、幻の想像の街にも道はその体を地面にくっつけて主人公たちが行き来するのを黙って支えているだけで彼らがこれから作っていくだろう物語になんの感傷もせず黙してなんの干渉もしない。
だけど、そんな何の変哲もない道を見るとき、僕らは果たして無限に続いてゆくだろうその強大な全体を想像せずにいられないのだ。この位置からは見えないその連続の無限に分岐するロードは故郷にも我が仮の宿にも、これから先出逢う人の家にも、最近気になるあの子の家にも、続く。そして物語は想起される。幻影の、光を通して初めて見える風景の中に現実の風景を重ねあわせる。僕らは確かにここにもいるし、あの彼方にもいる。道から建物は増殖していく。いつのまにか、都市へ変貌する。そしてそこに住む人の数だけ未完成の物語は始まる、あるいは続いていく。誰かが都市の全景に感動し、また他の誰かが感動する。図書館に行き、別の物語を読み繋がっていく。
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